a.「グローバル内部監査基準」の要求事項の構成要素を識別する
b.内部監査基本規程について取締役会と最高経営者と協議することの重要性を認識する
c.取締役会による承認の重要性を認識する
この章に関連する基準:基準6.2 内部監査基本規程
内部監査基本規程(Internal Audit Charter)は、内部監査部門の目的、権限、責任を正式に定める文書です。この規程は、内部監査部門の独立性と権限を担保し、組織内での位置づけを明確にするために不可欠です。内部監査人は、グローバル内部監査基準に基づく内部監査基本規程の要件と、その承認プロセスの重要性を理解する必要があります。
a. 「グローバル内部監査基準」の要求事項の構成要素を識別する
1. 内部監査基本規程に求められる主な構成要素
GIASの用語一覧では、internal audit charter(内部監査基本規程)は、次のように書いています。
internal audit charter(内部監査基本規程)- 内部監査部門への負託事項、組織上の位置付け、指示・報告関係、仕事の範囲、業務の種類及びその他の明細事項を含む正式な文書。
グローバル内部監査基準では、内部監査基本規程に以下の要素を含めることが求められています。
- 内部監査の目的
組織に対してどのような価値を提供するかを明確にします。 - 権限
記録、業務、システム、人員などへの無制限のアクセス権を規定します。 - 責任
内部監査部門および内部監査部門長の役割と責任を定めます。 - 独立性と客観性
組織内での報告ラインや位置づけを明確にします。 - 基準への準拠
グローバル内部監査基準および倫理規程への準拠を明示します。
2. 内部監査人の視点
- CIA試験では、内部監査基本規程に含まれるべき要素を問う問題が頻出です
- 「目的・権限・責任」の三点は特に重要なキーワードです
- 規程は形式的な文書ではなく、内部監査の実効性を支える基盤である点を理解する必要があります
b. 内部監査基本規程について取締役会と最高経営者と協議することの重要性を認識する
1. 協議が必要とされる理由
内部監査基本規程は、内部監査部門だけで策定されるものではありません。
取締役会および最高経営者と協議することで、次の点が確保されます。
- 組織の戦略やリスク認識との整合性
- 内部監査に期待される役割の共通理解
- 内部監査部門の独立性と権限に対する経営層の支持
2. 内部監査部門長の役割
- 内部監査部門長は、規程の内容を取締役会および最高経営者に説明します
- 協議を通じて、内部監査の範囲や報告関係について合意を形成します
- これにより、内部監査活動が組織内で正当に位置づけられます
c. 取締役会による承認の重要性を認識する
1. 取締役会承認の意義
内部監査基本規程は、取締役会による正式な承認を受けることで、その効力が確立されます。
取締役会の承認には、次のような意義があります。
- 内部監査部門の独立性と権限の正式な保証
- 組織全体に対する内部監査の正当性の明確化
- 経営層や被監査部門に対する牽制効果
2. CIA試験におけるポイント
- 内部監査基本規程は取締役会が承認することが原則です
- 経営者の承認だけでは不十分である点が、試験で問われることがあります
- 取締役会承認=独立性確保、という関係性を理解することが重要です
まとめ
- 内部監査基本規程は、内部監査部門の目的・権限・責任を定める重要文書です
- グローバル内部監査基準に基づく構成要素を正しく理解する必要があります
- 規程は、取締役会および最高経営者と協議して策定されます
- 取締役会による承認は、内部監査の独立性と正当性を確保するために不可欠です
- CIA試験では、内部監査基本規程の内容と承認主体が頻出論点です
主要概念 (Key Concepts)
独立性と正当性の確立
内部監査部門が経営層からの不当な圧力を受けずに活動するためには、組織内の最高機関である「取締役会」による規程の承認が不可欠です。これにより、CAE(内部監査部門長)は取締役会への直接的な報告ラインを確保できます。
無制限のアクセス権
監査業務を遂行するために必要な「記録、人員、物的資産」に対して、制限なくアクセスできる権限を規程に明記する必要があります。これは独立したアシュアランスを提供するための物理的・論理的な基盤となります。
責任の分離 (職務分掌)
内部監査人は客観性を保つため、自らが監査する業務の運営責任を持ってはなりません。規程では、内部監査部門が「何を責任とするか(チェック)」と「何を責任としないか(是正の実行など)」を明確に区別します。
戦略的整合性 (アライメント)
CAEは規程の策定・改定時にCEOや取締役会と協議し、内部監査の活動が組織の戦略的目標や現在のリスク認識と一致していることを確認する責任があります。
重要用語集 (Vocabulary List)
CAE (最高内部監査責任者/内部監査部門長)
内部監査活動を管理し、規程の有効性を定期的にレビューして取締役会に報告する責任者。
独立性 (Independence)
内部監査部門が偏りなく職務を遂行できる組織的な位置づけ(報告ライン)のこと。
客観性 (Objectivity)
個々の内部監査人が、利害関係に左右されず誠実に行う精神的な態度。
QAIP (品質保証および改善プログラム)
内部監査活動が基準に準拠し、効果的に行われているかを評価・改善する仕組み。
理解度チェック
- 内部監査基本規程に含めるべき「三要素」とは何か?
- 回答:目的 (Purpose)、権限 (Authority)、責任 (Responsibility)。
- なぜ規程の承認はCEOではなく、取締役会が行う必要があるのか?
- 回答:財務部門や特定の役員(CFOなど)による監査範囲の制限を回避し、組織全体の独立性を確保するため。
- 規程に「基準への準拠」を記載する意義は何か?
- 回答:専門職として「グローバル内部監査基準」および「倫理規程」に従って活動することを正式に公約するため。
- 内部監査人が発見した不備に対して、自ら修正仕訳を起票したり業務改善を行ったりしてはいけないのはなぜか?
- 回答:将来その業務を再度監査する際に、自らの仕事を評価することになり「客観性」が損なわれるから。
- 規程の有効性を維持するために、CAEが定期的に行うべきことは何か?
- 回答:規程を定期的に検討(レビュー)し、必要に応じてCEOや取締役会と協議の上、再承認を得ること。
【確認問題】
問題1.グローバル内部監査基準に従い、内部監査基本規程(Internal Audit Charter)を策定する主な目的は次のうちどれですか。
A.年間の内部監査計画と個別の監査実施手順を詳細に規定するため。
B.内部監査人が遵守すべき特定の監査技法とソフトウェアの使用を承認するため。
C.外部監査人との協力体制と報酬の支払い条件を明確にするため。
D.内部監査部門の目的、権限、および責任を正式に定義するため。
正解はD
基本規程は組織内における内部監査の「憲法」であり、目的・権限・責任を定義することが中核的な役割です。
問題2.内部監査部門の独立性を確保するために、内部監査基本規程において規定されるべき最も重要な項目はどれですか。
A.内部監査部門長の報酬を最高経営責任者(CEO)が決めるという条項。
B.職務の遂行に関連する記録、人員、および物的資産への無制限のアクセス権。
C.監査報告書のドラフトを被監査部門長が最終承認するという規定。
D.すべての監査業務を外部のコンサルティング会社に委託する旨の合意。
正解はB
無制限のアクセス権が明文化されていることで、監査対象からの妨害を排除し、独立した調査が可能になります。
問題3.内部監査部門長(CAE)が、内部監査基本規程の内容について最高経営者(CEO)や取締役会と協議することの主な利点は何ですか。
A.個別の監査報告書の内容について、事前に法的な免責を得るため。
B.取締役会が内部監査のすべての予算を、財務部門の承認なしに決定できるようにするため。
C.内部監査活動が組織の戦略的目標やリスク認識と整合していることを確実にするため。
D.内部監査部門が不備を指摘した際に、経営者がそれを修正する義務を免除するため。
正解はC
協議を通じて経営層の関心やリスク認識を反映させることで、内部監査の付加価値を高めることができます。
問題4.内部監査基本規程を「取締役会」が承認することの重要性について、正しい説明はどれですか。
A.取締役会の承認により、内部監査部門が経営層(シニアマネジメント)からの不当な影響を排除し、独立性を担保できる。
B.取締役会が承認することで、内部監査部門は法的責任を一切負わなくなる。
C.取締役会の承認は、外部監査人が内部監査の結果を利用するための必須条件である。
D.最高経営者(CEO)の承認だけで十分であるが、念のために取締役会の回覧が必要である。
正解はA
最高機関である取締役会の承認は、内部監査部門に正当な権威を与え、経営者からの独立性を確立します。
問題5.グローバル内部監査基準に基づき、内部監査基本規程に含めるべき「基準への準拠」に関する記述として適切なものはどれですか。
A.基準への準拠については、個別の監査計画書で言及すれば十分であるため、規程には含めない。
B.国際財務報告基準(IFRS)に準拠した監査を行うことを約束する。
C.内部監査活動がグローバル内部監査基準および倫理規程に準拠することを明示する。
D.現地の法律に抵触する場合でも、常にグローバル内部監査基準を優先することを宣言する。
正解はC
専門職としての基準および倫理に従うことを公約として基本規程に記載する必要があります。
問題6.内部監査部門長(CAE)は、内部監査基本規程が依然として適切であることを確認するために、どのような行動をとるべきですか。
A.規程の内容は機密事項であるため、内部監査部門内でのみ定期的に検討する。
B.内部監査人が交代するたびに、新しいメンバーに合わせて規程を改定する。
C.定期的に規程を検討し、必要に応じて最高経営者や取締役会の承認を得て改定する。
D.一度承認されたら、組織体制が大きく変わるまで見直す必要はない。
正解はC
定期的な検討と再承認は、規程の有効性を維持し、経営層との合意を更新し続けるために重要です。
問題7.内部監査基本規程において定義される「責任」に含まれないものは次のうちどれですか。
A.発見されたコントロールの不備に対して、具体的な是正措置を自ら実行する責任。
B.リスクベースの内部監査計画を策定し、実施する責任。
C.品質保証および改善プログラム(QAIP)を維持する責任。
D.重大な不備やリスクを取締役会へ報告する責任。
正解はA
是正措置の実行は経営層の責任であり、内部監査人が行うと客観性が損なわれます。
問題8.内部監査基本規程が、取締役会ではなく最高財務責任者(CFO)のみによって承認されている場合、どのようなリスクが生じますか。
A.監査範囲が財務領域のみに制限されたり、CFOの担当部署への監査が困難になったりする。
B.内部監査計画の策定に半年以上の期間を要するようになる。
C.監査報告書の誤字脱字が多くなる。
D.内部監査人が外部監査人と協力することが法律で禁止される。
正解はA
報告ラインが特定の役員に限定されると、その役員の管轄領域に対する独立した監査が妨げられるリスクがあります。
問題9.内部監査基本規程における「目的(Purpose)」の記載において、最も適切な表現はどれですか。
A.すべての従業員がミスをしないように常に監視し、罰則を与えること。
B.会社の利益を最大化するために、不採算部門の閉鎖を決定すること。
C.組織の運営に助言を与え、価値を付加し、改善すること。
D.税務当局への報告が正しいかどうかを、財務部長に代わって保証すること。
正解はC
内部監査の本質は、アシュアランスとアドバイザリーを通じて組織の価値を高めることにあります。
問題10.新しく任命された内部監査部門長(CAE)が最初に取り組むべき活動として、最も適切なものはどれですか。
A.直ちに過去5年分のすべての監査調書を再確認する。
B.独自の監査ソフトウェアを開発するために、予算のすべてをIT投資に充てる。
C.監査計画を立てる前に、すべての被監査部門に挨拶回りをして接待を行う。
D.内部監査基本規程を検討し、組織の現状や最新の基準に合致しているか確認する。
正解はD
自らの権限と責任の根拠である規程をまず把握し、必要があれば改定することが実効性のある監査への第一歩です。


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