A-02.内部監査への負託事項と、取締役会及び内部監査部門長の責任について説明する

CIA_パート1_A(01-08).内部監査の基礎(35%)

a. 内部監査部門の権限、役割及び責任を説明する 
b. 取締役会が内部監査部門の権限を確立又は更新する際に、内部監査部門長が果たす役割を説明する
c. 内部監査部門長の権限、役割及び責任を決定する際に、取締役会と最高経営者が果たす役割を説明する


関係する基準:ドメインⅢ・原則6 取締役会による承認
取締役会は、内部監査部門の負託事項を設定、承認、支援する。

学習の狙い

  • 内部監査が誰から、何を、どのような権限で託されているか
  • 取締役会・CEO・CAE(内部監査部門長)の役割分担
  • 内部監査基本規程(Internal Audit Charter)を中心としたガバナンス構造の理解

1. 内部監査への「負託事項(Mandate)」とは何か

1.1 負託事項の定義(GIAS / IIA)

内部監査の負託事項とは、

取締役会が、内部監査部門に対して正式に付与する権限・役割・責任の総体

を指します。

これは主に以下によって明文化されます。

  • 内部監査基本規程(Internal Audit Charter)
  • グローバル内部監査基準(GIAS)
  • 組織のガバナンス文書(取締役会規程等)

👉 CIA試験では
「内部監査は経営者の一部門ではなく、取締役会から独立して負託される機能」
という理解が非常に重要です。


a. 内部監査部門の権限、役割及び責任を説明する

グローバル内部監査基準の用語一覧では、次のように説明されています。
internal audit mandate(内部監査への負託事項) -内部監査の権限、役割及び責任。これらは、取締役会、法令及び規制、又はそのいずれかによって付与される。

内部監査の負託事項は、内部監査部門の権限、役割及び責任を規定し、内部監査基本規程に文書化されます。内部監査部門は、負託事項によって、取締役会及び最高経営者に客観的なアシュアランス、助言、インサイト及びフォーサイトを提供する権限を与えられる。内部監査部門は、組織体全体のガバナンス、リスク・マネジメント及びコントロールの各プロセスの有効性の評価、改善に、体系的で専門職としての規律ある手法を導入することによって、その負託事項を遂行する。

 内部監査部門長は、取締役会及び最高経営者と、内部監査基本規程における内部監査への負託事項及びその 他の重要な考慮すべき事項について、取締役会及び最高経営者の理解を助けることに重点を置いて協議すべき である。

2. 内部監査部門の権限(Authority)

2.1 基本的な権限

権限 – 内部監査部門の権限は、取締役会への直接の指示・報告関係によって生まれる。このような権 限により、取締役会だけでなく、組織体全体のすべての活動(例えば、記録、人員、情報資産及び物的財産)に 自由かつ無制限にアクセスすることができる。

📌 試験での定番表現

「内部監査部門は、その職務遂行に必要なすべての情報にアクセスできなければならない」

これは内部監査基本規程に明記されるべき事項です。


3. 内部監査部門の役割(Role)

・ 役割 – 内部監査部門の主な役割は、内部監査活動を実施し、内部監査業務を提供することである。リ スク・マネジメント又はコンプライアンスなど、内部監査以外の役割が内部監査部門長の責任の一部 である場合もある。このような監査以外の役割については、基準7.1(組織上の独立性)でさらに取り扱う。 GIASでは、内部監査の役割は以下のように定義されます。

3.1 中核的役割(Core Role)

内部監査は、

  • 独立した
  • 客観的な
  • 保証(Assurance)および助言(Advisory)活動

を通じて、

  • ガバナンス
  • リスクマネジメント
  • 内部統制

有効性を評価し、改善を促進する

役割を担います。

👉 CIA試験では
「保証」と「助言」の違い
経営責任を負わないこと(No management responsibility)が頻出です。


4. 内部監査部門の責任(Responsibility)

・ 責任 – 内部監査部門の責任は、その役割を遂行するための説明責任と義務、及び主要なステークホル ダーの具体的な期待事項から構成される。例えば、責任には通常、監査業務のパフォーマンス、コミュ ニケーション、法令、規制及び方針の遵守、「グローバル内部監査基準」への適合、並びに役割に付随するその他の活動に関する期待事項が含まれる。

主な責任は以下のとおりです。

  • リスクベース監査計画の策定
  • 内部監査の実施と結果報告
  • 是正措置のフォローアップ
  • 品質保証・改善プログラム(QAIP)の維持

📌 ポイント
内部監査は統制を設計・運用する責任は持たない
→ あくまで「評価者」


b. 取締役会が内部監査部門の権限を確立・更新する際の内部監査部門長の役割

5. 取締役会の役割(前提)

取締役会(または監査委員会)は、

  • 内部監査部門の最終的な監督者
  • 内部監査基本規程の承認主体

です。


6. 内部監査部門長(CAE)の役割

6.1 内部監査基本規程 の「提案者」としての役割

CAEは、取締役会が権限を確立・更新する際に、

  • 内部監査基本規程の草案を作成
  • グローバル内部監査基準への整合性を確保
  • 組織のリスクや事業環境の変化を反映

する責任を負います。

👉 最終承認者ではない点が試験で重要。


6.2 定期的な見直しの推進

CAEは、

  • 内部監査基本規程を定期的にレビュー
  • 組織変更・新規リスク発生時に改訂を提案

する役割を果たします。

📌 CIA頻出論点

「CAEは内部監査基本規程を維持・提案する責任を持つが、承認は取締役会が行う」


c. 内部監査部門長の権限・役割・責任を決定する際の取締役会と最高経営者の役割

7. 内部監査部門長(CAE)とは

CAEは、

  • 内部監査部門を専門的・組織的に統括
  • 内部監査の独立性と客観性を守る要

となる存在です。


8. 取締役会の役割

取締役会(または監査委員会)は、CAEに対して以下を担います。

8.1 CAEの任命・解任への関与

  • 任命・解任
  • 報酬
  • 評価

👉 職務上の報告ライン(Functional Reporting)を担う。

8.2 職務上の報告(Functional Reporting)とは

内部監査機能そのものに関する報告・関係を指します。

具体的には、次のような事項が含まれます。

  • 内部監査基本規程の承認
  • 内部監査計画の承認
  • 監査結果・重要な指摘事項の報告
  • 内部監査部門の独立性・客観性に関する事項
  • 内部監査部門長(CAE)の評価・任免への関与
  • 監査資源の十分性に関する協議

👉 これらはすべて
「監査という職務をどう果たしているか」に関する報告です。

8.3 CAEの独立性の確保

  • 経営者からの不当な制約を排除
  • 監査範囲・結果報告への干渉防止

9. 最高経営者(CEO)の役割

CEOは主に、

  • 部門運営上の報告ライン(Administrative Reporting)
  • 日常的な業務支援
  • 組織内調整

を担います。

部門運営上の報告(Administrative Reporting)とは、
内部監査部門を組織の一部門として円滑に運営するための報告関係
を指します。


9.1 部門運営上の報告の主な内容

部門運営上の報告に含まれる事項は、次のようなものが典型である。

  • 人事管理(採用・配置・評価・勤怠)
  • 予算管理・経費承認
  • 日常的な業務運営
  • 研修・能力開発の調整
  • 社内規程や事務手続きへの対応

👉 これらはすべて
「監査の中身」ではなく「部門運営」に関する事項である。

📌 職務上の報告と部門運営上の報告の対比(試験頻出)

区分意味主な内容報告先
機能的報告職務上の報告監査計画・結果、独立性、CAE評価取締役会/監査委員会
管理上の報告部門運営上の報告人事・予算・日常管理CEO等

👉 「何を報告しているか」で区別するのがコツ。

この章の練習問題


【問題1】内部監査部門の「負託事項(Mandate)」に最も適切な説明はどれか。

A. 内部監査部門がCEOの指示に基づいて遂行する業務範囲
B. 内部監査部門が監査委員会に対して提出する監査報告書の内容
C. 内部監査部門に対して、取締役会等が正式に付与する権限・役割・責任の総体
D. 内部監査部門が独自に定めた監査対象と手続きの一覧

正解:C
解説: 負託事項とは、取締役会等が内部監査部門に正式に与える権限・役割・責任のこと。内部監査基本規程に明記される。

【問題2】内部監査部門の「権限」に関する記述として最も適切なものはどれか。

A. CEOの承認があれば、必要な情報にアクセスできる
B. 監査対象部門の同意がある場合に限り、記録にアクセスできる
C. 取締役会の承認に基づき、組織全体の情報資産に自由にアクセスできる
D. アクセス権限は監査計画の内容に限定される

正解:C
解説: 内部監査部門は、取締役会の承認により、全社的な情報・人員・資産へのアクセス権限を持つ。

【問題3】内部監査部門の「中核的役割(Core Role)」に該当するものはどれか。

A. 組織の戦略立案
B. ガバナンス、リスクマネジメント、内部統制の有効性の評価と改善
C. 財務報告書の作成
D. 経営判断の最終責任の遂行

正解:B
解説: 内部監査の中核的役割は、独立・客観的な保証および助言を通じて、統制・リスク・ガバナンスの改善を促すこと。

【問題4】内部監査部門の責任に含まれないものはどれか。

A. リスクベース監査計画の策定
B. 是正措置のフォローアップ
C. 統制の設計と運用
D. 品質保証・改善プログラム(QAIP)の維持

正解:C
解説: 内部監査は統制の「評価者」であり、設計・運用の責任は持たない。

【問題5】CAEが内部監査基本規程に関して果たすべき役割はどれか。

A. 最終承認
B. 草案の作成と提案
C. CEOとの共同承認
D. 監査対象部門との合意形成

正解:B
解説: CAEは内部監査基本規程の草案を作成し、取締役会に提案する責任を持つ。承認は取締役会の役割。

【問題6】CAEが内部監査基本規程を定期的に見直す理由として最も適切なものはどれか。

A. CEOの指示に従うため
B. 監査対象部門の要望に応じるため
C. 組織の変化や新たなリスクに対応するため
D. 規程のページ数を削減するため

正解:C
解説: CAEは、組織の変化やリスク環境に応じて、内部監査基本規程の見直しを提案・推進する。

【問題7】CAEの「職務上の報告(Functional Reporting)」に該当するものはどれか。

A. 勤怠管理
B. 内部監査計画の承認
C. 経費精算の承認
D. 研修スケジュールの調整

正解:B
解説: 職務上の報告には、監査計画の承認、監査結果の報告、独立性の確保などが含まれる。

【問題8】CAEの「部門運営上の報告(Administrative Reporting)」に該当するものはどれか。

A. 内部監査結果の報告
B. 内部監査基本規程の承認
C. CAEの人事評価と勤怠管理
D. 監査資源の十分性の評価

正解:C
解説: 部門運営上の報告は、日常的な業務支援(人事・予算・勤怠など)に関するもので、CEOが担う。

【問題9】CAEの独立性を確保するために取締役会が果たすべき役割はどれか。

A. CAEの業務日報を確認する
B. CAEの任命・解任・評価に関与し、干渉を防ぐ
C. CAEの出張申請を承認する
D. CAEの業務内容を監査対象部門と調整する

正解:B
解説: 取締役会は、CAEの独立性を守るため、任免・評価・監査範囲への干渉防止に関与する。

【問題10】内部監査基本規程の承認権限を持つのは誰か。

A. CAE
B. CEO
C. 監査対象部門の責任者
D. 取締役会または監査委員会

正解:D
解説: 内部監査基本規程は、取締役会または監査委員会が承認する。

【問題11】内部監査部門の「保証(Assurance)」活動の特徴として最も適切なものはどれか。

A. 経営者と共同で意思決定を行う
B. 組織の業務を代行する
C. 客観的な評価を提供する
D. 経営戦略の策定を支援する

正解:C
解説: 保証活動は、独立・客観的な立場から、統制やリスク管理の有効性を評価することを目的とする。

【問題12】内部監査部門が「助言(Advisory)」活動を行う際に留意すべき原則はどれか。

A. 経営責任を共有する
B. 独立性と客観性を維持する
C. 組織の業務執行を代行する
D. 経営判断に直接関与する

正解:B
解説: 助言活動においても、内部監査は独立性と客観性を維持し、経営責任を負ってはならない。

【問題13】内部監査部門の負託事項を明文化する文書として最も適切なものはどれか。

A. 内部統制方針
B. 内部監査基本規程(Internal Audit Charter)
C. 業務マニュアル
D. 経営計画書

正解:B
解説: 負託事項は、内部監査基本規程により文書化され、取締役会が承認する。

【問題14】内部監査部門が「体系的で規律ある手法」を用いる目的として最も適切なものはどれか。

A. 組織の業務を効率化するため
B. 経営者の意思決定を代行するため
C. ガバナンス、リスク、統制の有効性を評価・改善するため
D. 財務報告の正確性を保証するため

正解:C
解説: 内部監査は、体系的で規律ある手法を用いて、ガバナンス・リスク・統制の有効性を評価・改善する。

【問題15】CAEの「職務上の報告ライン」に関する記述として最も適切なものはどれか。

A. CEOに対して、監査結果を報告する
B. 監査対象部門に対して、監査計画を提出する
C. 取締役会に対して、監査計画・結果・独立性を報告する
D. 財務部門に対して、監査報告書を提出する

正解:C
解説: 職務上の報告ラインは、取締役会または監査委員会に対して、監査活動の内容や独立性を報告する関係。

【問題16】CAEの「部門運営上の報告ライン」に関する記述として最も適切なものはどれか。

A. 監査計画の承認を受ける
B. 組織の業務執行に関する助言を行う
C. 勤怠・予算・人事などの管理を受ける
D. 監査結果の最終承認を得る

正解:C
解説: 部門運営上の報告ラインは、日常的な業務支援(人事・予算など)に関するもので、CEOが担う。

【問題17】次のうち、取締役会がCAEに対して果たすべき責任として最も適切なものはどれか。

A. CAEの出張旅費の承認
B. CAEの任命・解任・評価
C. CAEの勤怠管理
D. CAEの業務日報の確認

正解:B
解説: 取締役会は、CAEの独立性を確保するため、任命・解任・評価に関与する。

【問題18】内部監査部門の独立性を最も効果的に確保する方法はどれか。

A. CEOの直属とする
B. 財務部門に所属させる
C. 取締役会に直接報告させる
D. 各部門の承認を得てから監査を実施する

正解:C
解説: 内部監査の独立性を確保するには、取締役会への直接報告が不可欠。

【問題19】内部監査部門が「経営責任を負わない」ことの意味として最も適切なものはどれか。

A. 経営者と対立する立場を取る
B. 経営判断に関与しない
C. 経営者の指示に従わない
D. 経営会議に出席しない

正解:B
解説: 内部監査は、助言は行うが、経営判断や業務執行の責任は負わない。

【問題20】内部監査部門の独立性と客観性を最も効果的に支援する組織的要素はどれか。

A. CEOによる監査計画の承認
B. CAEの業績評価を監査対象部門が行う
C. CAEが取締役会に職務上報告する体制
D. CAEが監査対象部門の業務を兼務する体制

正解:C
解説: 職務上の報告ラインを取締役会に確保することで、内部監査の独立性と客観性が保たれる。

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