監査における統計サンプリング(おまけ)

内部統制(J-SOX)

1. そもそも有限母集団補正(FPC)とは何か

まず思想からです。

無限母集団の前提

統計の多くの基本式は次を前提にしています。

  • 母集団は非常に大きい(=無限とみなす)
  • 抽出しても母集団の性質はほぼ変わらない

この前提のもとで導かれたサンプルサイズがn=25n_\infty = 25です。


有限母集団で何が起きるか

母集団が 有限(N件) の場合:

  • 1件サンプルを取るたびに
    → 残りの母集団が減る
  • 情報量の増え方が
    → 無限母集団より「速い」

つまり:

同じ精度を得るのに、無限母集団ほど多くのサンプルは要らない

これを調整するのが 有限母集団補正(Finite Population Correction: FPC) です。


2. 出発点は「分散」の補正

この式の正体は、もともと 分散の補正式 です。

無限母集団での標本分散(イメージ)

Var(xˉ)=σ2nVar(\bar{x}) = \frac{\sigma^2}{n}


有限母集団での標本分散

有限母集団では、分散は次のようになります:Var(xˉ)=σ2n(NnN1)Var(\bar{x}) = \frac{\sigma^2}{n} \left( \frac{N-n}{N-1} \right)

このNnN1\frac{N-n}{N-1}

有限母集団補正(FPC)係数 です。


3. 「同じ精度」を要求する、がカギ

内部監査の文脈ではこう考えます。

無限母集団で n∞件 取ったときと
有限母集団で n補正件 取ったときの
精度(分散)を同じにしたい

つまり:σ2n=σ2n補正(Nn補正N1)\frac{\sigma^2}{n_\infty} = \frac{\sigma^2}{n_{\text{補正}}} \left( \frac{N-n_{\text{補正}}}{N-1} \right)


4. 数式を整理する(ここが核心)

σ²を消すと:1n=1n補正(Nn補正N1)\frac{1}{n_\infty} = \frac{1}{n_{\text{補正}}} \left( \frac{N-n_{\text{補正}}}{N-1} \right)

両辺を整理します。

両辺に n補正n_{\text{補正}}n補正​ を掛ける

n補正n=Nn補正N1\frac{n_{\text{補正}}}{n_\infty} = \frac{N-n_{\text{補正}}}{N-1}n∞​n補正​​=N−1N−n補正​​

両辺を交差計算

n補正(N1)=n(Nn補正)n_{\text{補正}}(N-1) = n_\infty (N-n_{\text{補正}})

両辺を展開

n補正Nn補正=nNnn補正n_{\text{補正}}N – n_{\text{補正}} = n_\infty N – n_\infty n_{\text{補正}}

n補正n_{\text{補正}}n補正​ をまとめる

n補正Nn補正+nn補正=nNn_{\text{補正}}N – n_{\text{補正}} + n_\infty n_{\text{補正}} = n_\infty Nn補正(N1+n)=nNn_{\text{補正}} ( N – 1 + n_\infty ) = n_\infty N


5. 最終形( 有限母集団補正(FPC)で使用した式)

n補正=nNN+n1n_{\text{補正}} = \frac{n_\infty N}{N + n_\infty – 1}

分母・分子を NNN で割ると:n補正=n1+n1Nn_{\text{補正}} = \frac{n_\infty}{ 1 + \frac{n_\infty – 1}{N} }


6. 監査の言葉に翻訳すると

この式はこう言っています:

無限母集団前提で25件必要だったサンプルは、
母集団が有限なら
「母集団サイズに応じて割り引いてよい」

よって:

  • N=150 → 22件
  • N=1000 → ほぼ25件

となる。


7. まとめ

有限母集団補正式は、無限母集団で想定される標本分散と、有限母集団での標本分散が等しくなるように定義されている。
その結果、無限母集団で必要とされるサンプル数 nn_\inftyn∞​ は、母集団サイズ NNN を考慮してn補正=n1+n1Nn_{\text{補正}}=\frac{n_\infty}{1+\frac{n_\infty-1}{N}}

と補正される。

以上

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