第5章
有限母集団補正を用いた拡大サンプルの考え方
5-1. 有限母集団補正(FPC)の本質
有限母集団補正とは、
「母集団が有限で、しかも抽出割合が無視できない場合は、
無限母集団を前提にしたサンプル数は過大になる」
という極めて素朴な考え方である。
数式で表すと:n=1+Nn∞−1n∞
- n∞:無限母集団の場合のサンプル数
- N:母集団サイズ
- n:有限母集団補正後サンプル数
5-2. なぜ「25件」が基準として残るのか(再確認)
無限母集団では:
- 信頼水準:90%
- 許容逸脱率:10%
- 逸脱0件
→ 必要サンプル数 = 25件
これは:
- 二項分布上、90%を明確に超える
- 予想逸脱率に依存しない
- 実務上の余裕を含む
ため、不動の基準値として使われる。
5-3. 有限母集団(例:150件)の初期サンプル
① 補正計算
n=1+1502425=1.1625≈21.6
👉 統計的に、22件程度が望ましいという結論になる。
5-4. では「1件不備が出た場合」はどうするか
ここが本題です。
発想の原則
有限母集団補正後であっても、
拡大サンプルの論理は「無限母集団の構造」を縮小適用する
つまり:
- 無限母集団
- 25件 → 1件不備 → 合計42件(25+17)
- 有限母集団
- 初期:22件
- 1件不備 → 合計サンプルを補正後42件換算まで引き上げる
5-5. 150件の場合の拡大サンプル(具体例)
① 無限母集団の拡大基準
- 合計サンプル:42件
- 許容逸脱数:1件
② 有限母集団補正
【拡大サンプルの補正式】
【条件の整理】
有限母集団補正後の初期サンプル
母集団
無限母集団の基準
【数値代入】
【結論】
👉 拡大サンプルを 15件
③ 実務的な整理
| 区分 | 件数 |
|---|---|
| 初期サンプル | 22 |
| 追加抽出数 | 15 |
| 拡大後合計 | 37件 |
つまり:
150件母集団・初期22件・1件不備 → 追加≒15件で拡大有効
5-6. なぜ「25+17」をそのまま使わないのか
理由は明確です。
有限母集団では:
- すでに母集団の相当割合を直接観測している
- 推計誤差が無限母集団より小さい
それにもかかわらず:
- 無限母集団と同じ42件を見るのは
👉 合理的保証を超えた過剰監査
になるためである。
5-7. 実務ルールとしての整理
初期評価
| 母集団 | 初期サンプル | 不備0 |
|---|---|---|
| 無限 | 25 | 有効 |
| 150 | 22 | 有効 |
1件不備があった場合
| 母集団 | 合計サンプル | 追加 |
|---|---|---|
| 無限 | 42 | +17 |
| 150 | 37 | +15 |
5-8. この章の結論(重要)
✅ 有限母集団補正を行っても、
拡大サンプルの論理構造は「25+17」と同一✅ 違うのは「母集団の大きさに応じて縮小する」点だけ
✅ 150件母集団では
初期22件 → 1件不備 → 合計37件が合理的



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